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​2021漆黒椀

目指したのは使う人が育てるお椀
私が仕上げた状態が完成ではなく
暮らしの中で受ける傷や擦れなどを
劣化として捉えるのではなく
自分色に染めていると思えるお椀
子や孫へと渡り
引継ぎ手がいなくなったら
棺と一緒に入れてもらえるお椀
そしてその時がこのお椀の完成形
という妄想しながら
塗ったり研いだりを繰り返し
制作しました

日常でふと

「いい感じに育ってるな」
と思えるお椀でありますように

    〜 特 徴 〜

黒の下には赤
赤の下には黒
を塗っているため使用していくことで顔を出してきます

本地、蒔地技法を用いています
刷毛目塗りで仕上げました

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工程

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布目摺り

​水と砥の粉を練り、漆を加えさらに練ったもの(錆漆)を布目を埋めるように塗っていきます。

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布目摺り研ぎ

​ペーパーで研いで形を整えます。

布着せに使う​

漆の準備

麦漆を作る

・​小麦粉と水を練ったもの

・生漆

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糊漆を作る

上新粉を水に溶かし火にかけ糊を作る

二つを混ぜ合わせて麦漆完成

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糊漆と麦漆を混ぜ

​これを布着せにつかいます​

糊と漆を混ぜ合わせて糊漆完成

​下地

2021漆黒椀

・水目桜深鉢 ×3

・欅ほっこり椀×2

​・ヨノキ椀  ×14

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刻苧(コクソ)彫り

木地のワレや節などを彫り刻苧を埋める準備をします。

木地固め

漆を希釈する場合もありますが、今回は希釈なしで木地全体に生漆を塗りました。

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刻苧埋め

刻苧彫りをしたところに刻苧(木粉、砥の粉、繊維などと麦漆を混ぜたもの)で埋めていきます。

刻苧掻い

刻苧で埋めたところを刃物で削ったりペーパーで研いで整えます。

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​目摺り

​水と砥の粉を練り、漆を加え更に練ったもの(錆漆)を木目を埋めるように塗っていきます。

目摺り研ぎ

​全体をペーパーで研ぎます。

布着せ

お椀の底、高台、高台回り、縁回り

の順で行いました。

布は寒冷紗を使用し、糊漆と麦漆を混ぜたもので寒冷紗を貼り付けました。

​布目揃え

貼り付けたあとは余分な部分を切り取り、全体をペーパーで研ぎました。

材料

・生漆、黒呂色漆、木地呂漆

・砥の粉

・地の粉[にーび(小禄砂岩)]

・布(寒冷紗)

・水

​・上新粉

・松煙

・弁柄

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​    ここでちょっとひと息

​ 下地は漆塗りの素地を整え強固にする重要な工程。漆を用いる下地(本型地、蒔地、本地など)とそれ以外の下地(渋下地、膠下地など)がある。【漆塗りの技法書より】

下地には2種類の技法を施しました。

・ヨノキ椀→本地

・欅ほっこり椀と水目桜深鉢→蒔地

本地と蒔地を選んだ理由は本で下記を読み挑戦したいと思ったからです。

【うるしの話より抜粋】

 本地も蒔地もあまりに固すぎて、いったんでこぼこに下地をつけると、そのでこぼこが技術的に直せなくなるほど堅い。あまり堅すぎて、刃物で削ろうとしても刃物のほうが切れ損じ、砥石よりも堅くてでこぼこを研ぎ直すことも容易でない。そのためにでこぼこにならぬように下地をつけることがひじょうに技術的修練を要する…

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​一辺地(本地)

​にーびと生漆をヘラで練り、塗っていきます。

​一辺地(蒔地)

生漆と黒呂色漆をまぜ(呂瀬漆)、呂瀬漆を木地に塗り、にーびを蒔きつけます。

​一辺地研ぎ

​形を整えながら全体を研ぎます。

​二辺地(本地)

​一辺地より細かいにーびを使用します。

​二辺地(蒔地)

木地に呂瀬漆を塗り一辺地より細かいにーびを蒔きつけます。

​二辺地研ぎ

​形を整えながら全体を研ぎます。

​三辺地(本地)

​二辺地よりさらに細かいにーびを使用します。

​三辺地(蒔地)

二辺地よりさらに細かいにーびを蒔きつけます。

​三辺地研ぎ

​形を整えながら全体を研ぎます。

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​錆付け

​錆漆で整えていきます。​

錆研ぎ

​研ぎで形を整えます。

​化粧錆付け

​錆付けで足りない部分に再度錆漆を塗り形を整え隙間などを埋めます。​

​このあと化粧錆研ぎで整えます。

工程一覧

木地固め

刻苧埋め

刻苧掻い

目摺り

目摺り研ぎ

布着せ〔全体〕

布目揃え

布目摺り

布目摺り研ぎ

〔本地・蒔地〕

1辺地

1辺地研ぎ

2辺地

2辺地研ぎ

3辺地

3辺地研ぎ

〔本地・蒔地〕

錆付け

錆研ぎ

化粧錆

化粧錆研ぎ

下地固め

下地固め研ぎ

中塗り⇄研ぎ

×5回

上塗り(完成)

下地固め

​生漆を全体に塗り下地を固めます。

下地固め研ぎ

形を整えます。また研ぐことで次の工程、中塗りの漆の付きがよくなります。

​中塗り​

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中塗り準備​

​黒呂色漆を濾紙でゴミを取り除きます。

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​中塗り1回目

​漉した黒呂色漆を塗っていきます。

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​中塗り1回目の研ぎ​

​形を整えます。

​また研ぐことで漆のくいつきがよくなります。

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​中塗り2回目研ぎ

​中塗り3回目研ぎ

混ぜたものを漉します

中塗り用の赤(弁柄)準備​

​木地呂漆と弁柄を乳鉢で混ぜ合わせます。

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中塗り2回目

​黒呂色漆を塗っていきます。

中塗り3回目

​黒呂色漆を塗っていきます。

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ここから黒(松煙)仕上げと​赤(弁柄)仕上げで塗りを分け、仕掛けを入れます。

​黒(松煙)仕上げ

​赤(弁柄)仕上げ

中塗り4回目

​準備した赤(弁柄)漆を塗ります。

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中塗り4回目​研ぎ終わって洗った様子。

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中塗り5回目

​赤(弁柄)の上に黒呂色漆を塗ります。

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中塗り5回目

​赤(弁柄)漆を塗ります。

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​上塗り

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中塗り4回目​研ぎ終わって洗った様子。

中塗り5回目​研ぎ

中塗り5回目​研ぎ

上塗り​[黒(松煙)]

松煙と木地呂漆をヘラで混ぜ合わせます。

​刷毛目を残す仕上げにしたいため松煙を多めにしました。

上塗り​[黒(弁柄)]

弁柄と木地呂漆をヘラで混ぜ合わせます。

​刷毛目を残す仕上げにしたいため弁柄は中塗りのときより多めにしました。

​黒(松煙)仕上げ

​赤(弁柄)仕上げ

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中塗り4回目

​黒呂色漆を塗ります。

中塗り4回目

黒呂色漆と弁柄漆の

​乾いた様子​

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